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幼馴染みの彼【3】
「あー、なんであんなこと言っちゃったんだろうなー」
夏鈴は家に帰った後、美里に応援すると言ってしまったことを心の底から後悔した。美里を応援するということは、自分は失恋するということになる。
「ちょっと夏鈴。電気もつけないで何してるのよ。暇なら晩御飯の準備手伝いなさい。今日お母さん、夜勤なんだから」
夏鈴が真っ暗な部屋で悶々としていると、長女の夏恋が少し怒ったように声をかけてきた。
「ただいまー。あれ?どうしたの?ケンカ?」
すると、次女の夏音もタイミング良く帰ってきて、機嫌の悪そうな夏恋を見て言う。
「ケンカじゃないよ。夏恋ちゃんが一方的に怒ってるだけ」
「あー、夏恋ちゃん生理前?あんまりイライラするとお肌に良くないよ」
「うるさいわね。夏音も帰ってきたなら、晩御飯の準備手伝ってよ」
「あー、わたし、無理。レポート、ダッシュでやんないと!ご飯できたら呼んでよ」
夏音は晩御飯の準備を上手いこと切り抜けると、さっさと自分の部屋に行ってしまった。次女はこういう所で本当に要領が良い。
「あ、あたしも宿題やんないと!夏恋ちゃん、ご飯お願いしますー」
夏鈴も真似をして、勉強に逃げる。本当は宿題なんてないが、今はご飯なんて作る気分になれなかった。
「まったく、二人して勉強に逃げるなんてズルイんだから。次の夜勤の時は、二人に準備してもらうからね!」
夏恋はまたプリプリと怒ると、キッチンの方へ行ってしまった。
夏鈴達三姉妹は、父を幼い頃に亡くして、以来、看護師の母に女手一つで育てられてきた。
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