幼馴染みの彼【3】

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長女の夏恋はしっかり者で、短大を出ると大きな商社に入り、家計を助けている。家事全般も卒なくこなして、妹二人を育てたのは、半分夏恋と言っても過言ではない。 次女の夏音は頭の回転が速くて、昔から成績が良かった。なので大学も良い大学に学費免除で入学して、親孝行をしている。適当で自由に振舞ってるように見えるけど、本当は誰よりも家族のことを考えてる優しい性格ってことを、夏鈴も夏恋もよく知っている。 夏鈴はそんな姉達と優しい母親に、なんの不自由もなく育てられた。父親のことはほとんど覚えていないし、いつも姉達が傍にいてくれるから、寂しいなんて思ったことがない。しかし大事に育てられたせいか、自分の意見を表立って言うことが苦手だ。強引に押し切られることもしばしばで打たれ弱く、夏音にはよく、「甘ったれ」と言われたりする。 「夏鈴、入るよ」 勉強机に本をを広げて、ぼんやりと碧斗のことばかり考えていたら、レポートをやると言って、夕飯作りから逃げた夏音が部屋に入ってきた。 「何ー?レポートは?」 「レポートなんて後でいいの。それより夏鈴、大丈夫?元気ないじゃん」 「そうかな?そんなことないけど」 「そんなことあるよ。どーしたの?隣の碧斗に彼女ができたとか、そんな感じ?」 夏音はこんな時、無駄に勘が良い。なんて答えればいいか夏鈴が頭の中で言葉を探していると、 「え?もしかして図星?」 と、様子を伺うように言ってきた。 「いや、違うよ!ってかなんで碧斗に彼女ができたら私が落ち込むの?全然あいつなんて関係ないんだから」 「動揺しちゃって可愛いねー。今更隠さなくていいのに。夏鈴が碧斗のこと好きなことぐらい分かってるってば」 「え、なんで・・・?!」 夏音の言葉に思わず耳が赤くなる。
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