騒音の都

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まずは鶏肉に齧り付く。肉が簡単に骨から外れるほどよく煮込まれており、味自体も本当に美味い。日本の醤油の様な味付けだ。豚の角煮も似たような味付けでトロトロに煮込まれている。バックパッカー達が口を揃えて「タイ料理が美味い。」と言うのがよく分かった。もっとも似たような味付けのものを選んでしまったことに若干の後悔は有ったが、また明日美味いものを頼めばいい事だ。しかし、無我夢中でタイ料理を頬張っていたのだが米を口に入れた瞬間全てがひっくり返った。 不味い!なんだこれは!? タイ米がジャポニカ米に比べて粘りが無くパラパラしたものだという事は知っていたし、地元のタイ料理屋やスリランカ料理屋等のエスニックなレストランで実際食べたこともあった。しかしこれは僕の知っているタイ米では無い、いや米ですら無いのではないか? 粘りが無いのは勿論だがコメの一粒一粒がボソボソと貧相な食感をしている。表面が若干乾いているのも原因の一つなのだろうがそれだけが原因では無い。米の味そのものが、不味いのだ。まるで細かくちぎった紙粘土でも食っているかのような食感だ。日本で食べたタイ料理の味を知っているから尚更強く不味いと感じるし、裏切られたような気持ちになる。 まじかよ、、、どうしてくれるんだよ、、、。誰だ?タイ料理が一番美味いだなんて嘘をついた奴は。 どうにかして食べられるようにと煮物の汁で猫まんまにして、しょぼくれながら料理を平らげた。 この旅行中何を食えば良いんだと痛くなる頭をいたわるかのような気持ちで残りのビールを一気に飲み干した。 こうなっては酒場にでも行って酒を飲もう。異国の酒場なら面白い出来事や人間が沢山いるだろうし、米よりビールの味の方が信頼出来る。 僕はふらふらと、良さげな酒場を探すために歩き出した。もっともたとえ米が美味かったとしてもどっかで酒を探し求める事に変わりは無いのだが。
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