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ぼくは、兄ちゃんなんだから。ここは、ぼくひとりでどうにかしてみよう。
「あの。やっぱり、出てください。知らない人だから」
そうつげると、おじさんはちょっとがっかりしたように見えた。
その時、妹の七海が居間に入ってきた。
「あれっ。おきゃくさん?」
「おきゃくというか、知らない人なんだ」
「わたし、トランプならしてもいいよ」
ぼくの言うことを聞いていないのか、七海はそんなことを言う。
「トランプ? いいよ。トランプしよう」
おじさんは、かってにのり気になって、居間に上がってこようとする。
「ちよっ。こまるよ」
「お兄ちゃん。じゃましないで」
「じゃま、って。いいかい、七海。知らない人を家に上げてはいけないんだよ」
ゆっくり言い聞かせた。
七海は、おじさんの顔をじっと見ている。
「七海、知ってるよ。知らない人、じゃないよ」
「知ってる? 本当に?」
「うん。何度も家に来てるよ」
「そうなの? そうなのか……」
はじめは、あそびたいだけなんだろう、と思った。でも、しだいに、うそはついてないんじゃないかな、という気がしてきた。
それに、だ。
外にいるシバ犬のタロウが、ぜんぜんほえていないのだ。
やっぱり、何度も家に来ている人なのかな。
ぼくが知らないだけ、ということもある、か。
「それじゃ、どうぞ」
気にはなったけど、家に上がってもらうことにした。
「おじゃまします」
おじさんが居間に上がってくる。そのさい、ドロをきつくしたようなにおいがした。
「とどのつまり、それは多分、ボクのせいじゃないんだな」
顔に出てしまったのか、おじさんにそんなことを言われた。
「お兄ちゃん。早くすわって」
七海に言われ、いつもの場所にすわる。おじさんはというと、さっさとすわって、こたつの上のハッサクとそろばんに見入っていた。
ぼくたちは、ババぬきをしたり、七ならべをしたりした。
けれど。
七ならべになると、まったくかてなくなった七海がふてくされてしまった。読み方はちがうけど、七ならべには自分の名前の一字が入っているから、お気に入りのあそびみたいなのだけれど。今日はカードのめぐり合わせもあって、どうにもうまくいかないようだった。
「だめ。もうなげ出し。あ~ぁっ。こんなカードじゃかてっこないよ」
七海はこたつの上に自分のカードをほうりなげた。
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