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「そういうの、よくないぞ。よく見たら、いける場合もあるんだから」
ぼくも小さいころ、なげ出しになった時にはらを立てて母さんたちをこまらせたな。と、思いながら、ほうられた七海のカードをならべてやる。
「あれっ? これは――」
と、とびとびにならべていた、ぼくの手が止まる。
「あっ……」
ぼくのしめしたカードを見て、七海が口元をおさえた。本当に、出せるカードがのこっていたのだ。
「よく見ないから」
「見たんだもん。ちゃんと見たんだもん。……もう、いいよ。どうせ、つぎはなげ出しなんだから。あんなカードじゃ、どうせかてないもん」
「七海」
と、しかろうとした時だった。おじさんがゆっくりと口をひらいた。
「カードがかなしむ。トランプがかなしむよ」
おじさんはへんなことを言い出した。
「入り用のものだけをぬいて、のこりはポイというのはよくない」
それは、気持ちのこもった口ぶりだった。
どういう意味だろう。入り用のものだけぬく、というのは。……出せるカードを出して、ということかな。で、のこりはポイ、は、なげ出しでカードをほうることかな。
……カードをほうったのがよくないと言ってるのかな?
「だって」
と、七海は口をとがらせた。
とがめられた、とはかんじたらしい。
「そういうのはさびしいものだよ」
おじさんはおなかにかかえるよう、そろばんを持っていた。シャチャッ、と音がする。
「わかった。なげ出しでも、もう少しやさしくカードを出すよ」
七海がつぶやくよう、言った。
おじさんがうなずいた。ゆったりわらったように見えた。おじさんは、そろばんをこたつの上にもどす。もう一度、シャチャッ、と音がした。
「それじゃ、そろそろおいとましようか」
「えっ。まだいいじゃない。そういうの、かちにげって言うんだよ」
かちにげ、というほどじゃないと思うけど。たしかに、七海よりはかっていたかな。
「とどのつまりは、時間切れ……。いや、時間が来たということさ」
言って、おじさんは帰っていった。そのさいも、やっぱりタロウはほえなかった。
「ただいま」
おじさんがうちを出てから少しして、父さんが帰ってきた。
父さんは、大きなふくろをかかえている。
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