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【第一章】意義と宿運〔1〕
ぬけるような青空は、梅雨の終わりを告げていた。
紺碧に塗りつぶされたキャンバスを、四角く切り取るようにそびえ建つ赤銅色のレンガ建造物。
『横浜赤レンガ倉庫』
神奈川県横浜港にある歴史的建造物の付近一帯は、広場と公園を備えた『赤レンガパーク』として『横浜みなとみらい』地区の代表的な観光施設となっていた。
「遼! 良い天気だし、昼飯はテイクアウトして外で食べないか? 海が見える場所が良いな」
レストラン、雑貨店舗などが入った2号館倉庫の入り口で、背の高い快活そうな肌色の少年が、隣で観光ガイドに目を落とす優しい雰囲気の少年に声を掛けた。
「優樹は真冬でもテラス席を取ろうとするくらい屋外派だからね。僕は、どっちでも良いけど……」
秋本遼は、友人である篠宮優樹に呼びかけられ笑いながら読んでいた観光ガイドを閉じる。
倉庫群の先、広く開けた公園に面した海から吹く気持ちの良い風が、遼の柔らかな栗色の髪を乱した。日差しは強いが、憩いの場に用意された木陰のベンチから海を眺め昼食を取るのも悪くない。
「ええっ? 日焼けしそうだから、お店のテラス席がいいなぁ」
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