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その年の3月はじめ、少年はいつものようにイルカとアシカのショーを見に来ていた。
そしてそれが終わると、少年はお姉さんを一瞥、のはずだった。
しかしその日は違った。なんと、少年がお姉さんに近づいて来たのだ。
きょとんとするお姉さんの前で、少年はたどたどしく声をかけた。
「お姉さん……」
「ん? 何かしら?」
「ぼく、あの……」
「どうしたの?」
言葉の先をお姉さんは瞬時に理解したが、あえて彼に言わせることにした。
少年は息を吸い込み、上目がちにお姉さんを見て、
「お姉さんのこと、好きです!」
思い切ったストレートな告白。子供らしくて素敵だなと思ったお姉さんは、少し間を置いて、子供を諭すかのごとく答えた。
「ありがとう。でもごめんね。私、もうすぐ結婚するの」
「そうなんですか……」
ものすごく残念そうな表情を見せた少年を見てお姉さんはフォローを入れた。
「好きって言ってくれたのはうれしいよ。だからね、お姉さんの幸せを祈ってて欲しいの」
「……、お姉さんの幸せ?」
「うん。私も、キミの幸せを祈っているから」
少年は遠慮がちに「ありがとう」と答え、その場を後にしたのだった。
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