第2章 3年後、思わぬ形で

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 5月も半ばのある朝、少年、いや、青年がいつものように大学の最寄り駅で電車を降りた。 「(講義の前に図書館で調べものしなきゃ……)」  考え事をしながらふと見ると、男女二人組が何やら口論している。かなり鬼気迫った感じだ。 「あなた、やっぱり浮気してたのね!」 「よくわかったな、バレちゃ仕方ない」 「ずっと後をつけてたのよ!」  ふたりのうちひとりは、あの大きいサングラスをかけた女性、もうひとりはマスクをした男性。声が大きいのか、まわりにいたひとが何人か足を止めたが、二人は意に介さないようだ。  そして、ついに男が女性にパンチを浴びせようとした。 「やめろ!」  思わず青年が叫ぶ。しかし男の拳が飛んできたところをすんでのところでかわした。そのはずみでサングラスが宙を舞い、女性の顔があらわになった。 ――あの水族館のお姉さんだ  青年がお姉さんを守るように前に出る。それを見た男は無言でその場を立ち去った。 「ありがとう……」  お姉さんが青年に礼を述べた。 「怪我はありませんか? 病院に行きますか?」 「大丈夫よ、あら、あなたは……」 「覚えてました? 3年前にお姉さんに告白した……」 「……、久しぶりね……」  青年は、本当は話がしたかった。 「はい、あ、あの、僕でよければ、お話聞きますよ」  お姉さんは遠慮がちだけど、少しだけの笑顔をみせて 「……、ありがとう。近くに静かな喫茶店があるの。そこに行かない?」  青年に異論はなく、そのまま二人で喫茶店に入っていった。
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