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その写真屋は、2階建のレトロで小さな洋館風の造りをしていた。
建物は古く、白い板を張り合わせた壁はところどころ塗料がはげてしまっている。
二つの出窓を挟んで、正面には斜め格子が入ったすりガラスがアンティークな雰囲気を醸し出す扉があった。
その扉の上に、昔の洋風なフォントで『和田塚写真館』と書かれた看板が掛けられている。
店先には、電動自転車のような形をした、小さな赤いバイクがちょこんと置かれていた。
ちょっと店に入るのが憚れる。
こんないかにも古い写真屋さんで、最新デジタルカメラなんか見てもらえるのだろうか。
とは言え、他に選択肢はない。
思い切って扉の取っ手に手を掛けて、そっと開く。
とたんに男性の怒鳴り声が耳に飛び込んで来た。
「何を言ってるんだよ、あんたは!」
びくっとしながらおそるおそる店の中を覗き込む。
紺のポロシャツを折り目の入ったズボンにインした、小太りの初老男性が立っていた。
頭はすっかり禿げ上がっており、ひん剥いたその大きな目には怒りの炎が揺らめいている。
その男性の対面には誰かいるようだが、この位置からは見えない。
ああ、なんか怖そうな店主だ。いかにも昔ながらの頑固親父がやっている写真館のようだ。
こんな店にカメラ音痴の私なんかが入ったら、ここは素人が来るところじゃねえって、こっぴどく怒られてしまう可能性が高い。
そっと扉を閉めようとした時、ふいにこちらを向いたその『ハゲタコ親父』と目があった。
「おや?」
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