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「モードダイヤルがM。つまりマニュアル撮影になっていたんだ。マニュアル撮影っていうのは露出とシャッタースピードを自分で設定して撮影するモードだから、それらがちゃんと設定されてないと露出オーバーで撮った画像が真っ白になったり、逆にアンダーで真っ黒になったりするんだよ」
「……ろ、ろしゅつ?」
なぜかカメ吉のなかで踊る素っ裸の露出狂オヤジの姿が頭に浮かび、ぽかんとする私を見て彼はにっこりと笑った。
「カメラ初心者なんだね。まあ、最初はここのダイヤルをMじゃなくてPに合わせてプログラムモードで撮影するといいよ。プログラムモードって言うのは、レンズから入ってくる光をコントロールする露出とシャッタースピードを自動的に適正な数値に合わせてくれるんだ」
「は、はあ」
何を言っているのかはよくわからないが、どうやらむやみにカメ吉のダイヤルを回したのがまずかったらしい。
カメラの知識ゼロなのに、適当にいじって壊れたと言ってしまったことが恥ずかしくなった。
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ、カメラ壊れてなくて良かったね。他は大丈夫かな?」
そう言われて気がついた。
もとはと言えば、紫陽花の色がおかしくなったのが原因だったのだ。
こうなったら恥の上塗りでも構わない。
「あのう…… もうひとつだけいいですか?」
「うん、なんだい?」
「カメラ詳しくないんで、またバカげたことかもしれないんですけど、撮った花の色が変なんです」
カメ吉の再生ボタンを押して、さっき撮った紫陽花の画像を彼に見せた。
「ホンモノは紫色をしてたのに、なぜか青く写っちゃうんです」
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