第4話 月光に長く棚引く追い人《ストーカー》の影

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第4話 月光に長く棚引く追い人《ストーカー》の影

長かった梅雨が明け、灼熱の太陽の光が降り注ぐ季節になった。 休日の昼、私はクーラーをがんがんにかけながら、ベッドの上でだらだらとスマホをいじっている。 サヤカがSNSを更新していた。 というか、SNSの女王サヤカはほぼ毎日写真をアップしていて、ここのところ、フォロワーやいいねの数もうなぎ上りだ。 『今日は湘南海岸にきてまーす。暑いけど、やっぱり海はサイコー!』 そんなコメントとともに、波打ち際でアロハのハンドサインをするビキニ姿のサヤカの写真が添えられていた。 いいねの数は優に1000を超え、その下に、フォロワー達のたくさんの賞賛コメントが並んでいる。 『サヤカちゃん、ビキニが似合う!』 『スタイル最高だね!』 『もっと、水着の写真アップして!』 などなど、さながら人気アイドル扱い。 「ふんだっ!」 私はスマホに表示された、サヤカの満面の笑顔に向かって毒づく。 ありもしない『よくないね!』ボタンを、頭の中で激しく1万回連打する。 そんな燃え上がった虚しい嫉妬にふと我に帰り、自分でもあきれてため息をついた。 今日、サヤカはここからすぐ近くの海に来てて、夏を満喫している。 それなのに私はどうだ。 地元だというのにどこにも行かず、だらだらとベッドに寝転がってるだけじゃないか。 「よし、私も出かけるぞお!」 天井に向かって声を上げ、気合を入れてみる。 でも、どこへ行くというのだ。 ひとりで水着着て海へ行くのは気が進まないし、休日で混雑した観光名所を汗だくになって回るのもおっくうだ。
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