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「適当な大きさに切ってください」
鶏肉の塊を渡されて、適当ってどんくらいだよ?と思いながら、それと睨めっこをしていれば
「一口で食べれるよりも少し大き目くらいです」
「へぇ。このくらい?」
肉だから、ざっく!って音はしないんだけど、そんな感じで切って見せれば、植本は笑って頷く
「それが終わったら、下味つけて…」
「ああ!そんなにいろいろ言うな!」
「まだ、そんなに言ってないですよ?」
「オレは今、これにいっぱいいっぱいなの!」
必死で鶏肉と戦ってるオレを植本は、ホントに可笑しそうに笑う
「吉本さんって、完璧だって聞いてたんですけど、出来ないことあるんですね」
「どんな噂があるか知らないけど、出来ないものだらけだよ」
「そうなんですか?」
「料理は出来ないし、スポーツもあんまり得意じゃない」
「そうなんですか?」
「うん。植本知ってる?波多野拓海ってやつ」
「ああ、バスケ部のエースですよね」
「拓海はなんでも出来るよ。あいつはさ、ホント完璧。まぁ、勝てるとこって言ったら勉強くらいかな」
そう言ってるオレを植本はじっと見つめる
「なんだよ」
「吉本さんって、波多野さんのこと話す時ってそんな顔するんですね」
「え?」
「なんでもないです」
植本は、ふと寂しそうな顔したけどすぐに笑顔になって
「腹減りましたよね。早く作りましょ」
そう言って、野菜を切り始めた
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