5/5
前へ
/21ページ
次へ
「適当な大きさに切ってください」 鶏肉の塊を渡されて、適当ってどんくらいだよ?と思いながら、それと睨めっこをしていれば 「一口で食べれるよりも少し大き目くらいです」 「へぇ。このくらい?」 肉だから、ざっく!って音はしないんだけど、そんな感じで切って見せれば、植本は笑って頷く 「それが終わったら、下味つけて…」 「ああ!そんなにいろいろ言うな!」 「まだ、そんなに言ってないですよ?」 「オレは今、これにいっぱいいっぱいなの!」 必死で鶏肉と戦ってるオレを植本は、ホントに可笑しそうに笑う 「吉本さんって、完璧だって聞いてたんですけど、出来ないことあるんですね」 「どんな噂があるか知らないけど、出来ないものだらけだよ」 「そうなんですか?」 「料理は出来ないし、スポーツもあんまり得意じゃない」 「そうなんですか?」 「うん。植本知ってる?波多野拓海ってやつ」 「ああ、バスケ部のエースですよね」 「拓海はなんでも出来るよ。あいつはさ、ホント完璧。まぁ、勝てるとこって言ったら勉強くらいかな」 そう言ってるオレを植本はじっと見つめる 「なんだよ」 「吉本さんって、波多野さんのこと話す時ってそんな顔するんですね」 「え?」 「なんでもないです」 植本は、ふと寂しそうな顔したけどすぐに笑顔になって 「腹減りましたよね。早く作りましょ」 そう言って、野菜を切り始めた
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加