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チーズケーキとロールケーキとカフェラテ 目の前に並んだそれら フォークを持ちどっちを食べようか悩んでいると 「食べないならもらうよ?」 いつの間にか隣に座っていた山田がにこにこしながらこっちを見ていた 「客のを狙うな」 「うちのだからいいでしょ」 同級生の山田太朗は、オレらが良く来るカフェの息子 だからここにいてもおかしくないんだけど 「金払うならいいぞ」 にこって笑いながら奥から出てきたここのパティシエの鮫嶋礼司こと礼さん オレらのおにーちゃんみたいな存在で悩み事や愚痴などをよく聞いてくれる 山田と礼さんは仲が良くて、ホントの兄弟じゃないかって思うほど 「大翔には、食わせてやってたじゃん」 「あれは、あいつが教えてくれてって言ってきたからな」 礼さんが言うあいつとは、山田の弟 大翔っていうんだけど、植本と同じで一個下 可愛い顔をしている太朗とイケメンの大翔 顔も性格も兄弟なんて思わないくらい似てない でも仲がいいし、オレらにも懐いてくれるから、可愛い弟 「ずりぃな」 「山田の方がズルいだろ。オレは食べさせません」 チーズケーキをちょっと大きめの一口分をフォークで掬って、口の中に入れる一瞬にして幸せな気分になる 「可愛い顔しちゃって」 ふふと山田は笑ってこっちを見てから、前に座っている拓海に 「俺にも奢れよ」 「なんで、お前に奢らなきゃなんないんだよ」 「優さんのこんな可愛い顔が見れるのも、うちのケーキのおかげだと思わない?」 「それを言うなら、作った礼さんにだろ」 「でも、うちがカフェをやってるから礼さんが来てくれた。じゃなきゃ、礼さんのケーキは食べれない。ということはだよ、拓海は俺に感謝しなきゃいけない。はい、奢れ」 山田が屁理屈を言っているのに、拓海はいつも山田に言いくるめられる 「そっか。じゃ、奢らなきゃいけないのかな」 なんか納得している拓海が可笑しくて笑えば、そのやりとりを聞いていた礼さんも笑ってる 「拓海くんは、素直だな」 「人を疑うことが苦手なんですよ」 「物は言いようだな」 礼さんはそういうと 「俺が今日は奢ってやるから、好きなのを食えよ」 「ホント!」 「優くんには、俺の新作を食べてね」 「ありがとう!」 「礼さんは、優さんにとことん甘いから」 なんて山田と拓海は呆れたような顔をしながらも、ショーケースに並んでいるケーキを選び始めた
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