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たぶん、物心ついた頃からこいつのことを好きだった
親の都合で引っ越してきて、家は隣
親同士も仲が良くなり、オレも拓海も一人っ子だったからすぐに仲良くなって
いつも一緒にいるようになった
オレの両親は、互いに仕事を持っていたから忙しく
両親のいないときは拓海の家にいるようになって、拓海のお母さんは兄弟のように接してくれた
その頃のオレは顔も女の子みたいで身体も小さく、よく近所の年上の男の子に揶揄われることが多く
でも気の強さは今と変わらず、歯向かっていくんだけど敵うわけもない
そんなオレを拓海はいつも助けてくれた
『ゆうちゃんをいじめるやつは、おれがゆるさない!』
オレより少し大きい拓海は、ぼろぼろになってもオレをいじめる男の子に向かっていってくれた
そんな拓海がカッコよくて
『ぼく、おおきくなったらたっくんのおよめさんになる!』
今思えば、なんて恥ずかしいことを言ってたんだろう
その時のオレの口を塞ぎたくなるが、拓海は覚えてるわけなんてない
頭に乗せている拓海の手を払いのけると
「早く部活に戻れよ」
なんて可愛げもなく言えば、拓海はふふふと笑って
「顔は可愛いのに、お口は可愛くないよね」
「うるさい。だいたい、 バスケ部のエースがこんなとこで何してんの?」
放課後のこんな時間に、拓海がなんでいるのか不思議に思って聞けば
「優ちゃんがさ、見えたから」
「は?」
「体育館から、優ちゃんがこっちに来るのが見えたから」
拓海の笑顔の中に、オレを心配する顔が見えた
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