1.領主ひとすじの狼が壁尻モブレされる話

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「た、」  助けてくれ、と言おうとしたタイミングで中をこすられ、ルフは反射的に口をつぐんだ。この男はばれることが恐ろしくないのだろうか。駆け寄って来たのが領主その人とはまさか知らなくても、馬の馬蹄とガシャガシャいう金属音を聞けば、騎士だろうと分かるだろうに。 「おおおお前、お前まさかそんな、壁にはまっているのか!?」 「うん……」  駆け寄って来た生真面目そうな見た目の騎士が叫ぶ。さっきぶりだ。何か用事で街壁の外を回っていたのだろうか。主が飛び降りたことで放された馬が、のんびりと草を食みはじめる。呆れた顔の老騎士が馬の手綱をとるのが見えた。慌てて寄った領主が、ルフの顔を覗き込んでぎょっとする。
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