1.領主ひとすじの狼が壁尻モブレされる話
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「な、泣いているのか」 「そんなわけない」 悪意なく不意に暴露された動揺で、否定する声が涙ぐんで揺れた。こんな理不尽に屈することなどないと、誇り高い狼の姿を保っていたかったのに、これでは助かったのか貶められているのか分からない。 「引っ張ろう」 しごくまっとうな提案をした領主が、壁から生えたルフの上半身、脇の下に腕を差し込んだ。
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