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耳元で好きな男の声がする。まるで愛されているようだった。完全な錯覚ということが分かっているので必死に声をとどめようとするが、ルフの体にはスイッチが入ってしまって、今や貪欲に快楽を貪ろうとしていた。
「抜け、ない、なっ」
「丁度いいではないですか、放置しましょう」
「バカを言うな。――もう少しだからな」
老騎士を叱咤して、領主はさらにルフを引っ張るべく腕に力を込める。ルフも、鎧に包まれた胴に腕を回してすがりついた。奥歯を強く噛んで声を殺しているのを、無理矢理引っ張り出される痛みのせいと勘違いして、ルフに向ける領主の声は子をあやすようにやさしい。
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