1.領主ひとすじの狼が壁尻モブレされる話

6/40
前へ
/40ページ
次へ
もう二十年若ければどうだったか分からないが、寄る年波に勝てない老人ではルフを捕らえることなど不可能だ。めっぽう強いからこそ、平気な顔で森を出て人間の街に出入りしていられるのだ。 「何度も言うがルフは犬ではない、狼だ」 「あなたがそう甘い顔をするからつけ上がるのですぞ! 手など取られて! はっきりお断りください!」 「……いいだろう別に、手ぐらい……」  老騎士の矛先が領主に向くのを見てルフはすかさず逃げを打った。老人の小言に付き合うほどヒマではない。なわばりを見て回ったり、こっそり狩りをしたり、やりたいことはいくらでもある。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加