1章:くっ、中世のくせに意外と不便じゃない・・だと

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☆ ☆ ☆  ……今日も嫌な任務に向かうところだった。  なぜ俺がこうなったのか考えたことがある。だが、何度考えても状況は好転しない。もうこうなるしか無かった、……としか言えない。  小さいころから沢山の勉強をした。  そうすると父と母が褒めてくれたからだ。  自分にも勉強が性にあっていたのかもしれない。気づけば国の最高学府を首席で卒業していた。  卒業後、俺はかねてより希望で日本の大学院に行くこととした。  そう、あの外道ぞろいの日本にだ。  俺は批判するときは実際に体験してからにする。一極に洗脳されて流されるのはプライドが許さない。他の奴らの様に一山いくらの人間にはなりたくないからだ。  その様な気分で俺は意気揚々と日本へ留学した。  大学院での勉強中、今まで刷り込まれてきたことがどんどんと剥がれ落ちていった。  その当時はそんな気分だった。  逆洗脳という線もある。  当時の俺は勉強した内容を話すと苦笑いを浮かべていた、今は亡き母親の顔を思い出しながら、『この国の情報が間違っているのかもしれない』と信じて極力フラットな情報を集めていった。  残念がら洗脳されていたのは自分だと結論した。  ではどうしようかと考え、故郷の先達の例に習うことにした。  日本で生活する同郷人たち。特に俺の様に高学歴の人間は気付くものが多い。  その人たちは目立たぬように、協力的に見えるように、そっとアメリカや日本企業に就職して静かに関係を切ってゆくのだ。  俺は親族全員を高校の時に事故で亡くなっていた。なのでもはや国とは縁がない。  育ったところが首都、大都会だったこともよかったのかもしれない。  しがらみはほとんどなかった。これは両親に感謝である。  だから俺も日本企業に就職した。  就職先は世界に冠たる大企業にだ。  俺はここで学ぶ。  そして……やっぱり、その経験をもって俺は故郷で活躍したいと思う。  おりしも時代は国の政策が大当たりで、世界中からその成長性を期待されていた。  成長した大国になれば責任も生じる。故に俺の未来は明るいはずだった。  
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