1章:くっ、中世のくせに意外と不便じゃない・・だと

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 この時気づこうと思えば、先ほどから『電車の外を流れる風景が繰り返されている』ことに気づけたはずだ。  この時気づこうと思えば、先ほどから『周囲の人間が精巧にできた人形に代わっている』ことに気づけたはずだ。  だが今、浮かれている勝は異変に気づけない。  勝は次の駅に到着するのを待つ、その時が訪れないとも知らず。  勝は次の駅を待つ、旅行中彼女に伝えなければならない言葉を探しつつ。  気づいたときは勝の視界が右から左に変化を始めた。  無機質な電車内から、小麦畑に変化する。  急激な変化に膝をつく。咄嗟につかもうとした吊り輪はない……。
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