1章:くっ、中世のくせに意外と不便じゃない・・だと

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「えらいわ、全部食べたわね。おいしかった?」  無垢な笑顔ってやつですな。  全部食べたのが意外だったのでしょうか。  それともこんなまずい料理を食べ切ったことへの称賛でしょうか。  前者だと思います。農家の嫁なのです後者だったらお説教ものです。 「僕も料理してみたい!」  もう勘弁なのでおねだり(深刻)です。  調味料が塩だけでもこれ以上のものを作れる自信があります。  祖母を見上げて、かわいらしく首を傾げます。  幼児のかわいらしさアピールってやつです。 「うーん、包丁は危ないから無理かな」  うかつでした。その通り包丁を持てませんでした。  さらに3歳です。  私が大人だった時に3歳児に言われたとしても包丁も火もあぶなすぎるので触らせるわけがありません。 「あとね」  祖母は私の視線を誘導するように台所を見ます。  ……そうか、身長も足りませんでしたか。 「大きくなったらおばあちゃんにおいしい料理作ってね」 「うん!」  私は満面の笑みで祖母に返答します。  脊髄反射ってやつですかね。慈愛に満ちた祖母の顔を見ていると考える前に体が反応します。体が正直で困ります。
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