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(いや、時計塔があれば還元できる。なんなら小型魔石貰えれば魔法力バッテリーも作れるぞ)
ほほう。それなら作っても怒られませんね。
「マイルズいる?」
「ええ、今マイルズなう! なのです」
(勝さんもいるよ)
勝さん、祖母には聞こえてませんよ?
(気分だよ)
「ちょっといいかしら?」
「かまいませんが何かあったのですか?あ、再起動しますのでしばしお待ちを……」
ゆっくりと起き上がると祖母がこまった顔をします。
「いえね、マイルズがこの間作った光学兵器……じゃなくて超小型魔法石搭載型魔法具」
言い直さなくてもそれしかない表現ですよ……。……ああ、木の棒に付けて母の服を焼いたあれですか。
「あれがね、王都の大商家の旦那に見つかっちゃったらしくてね」
「はぁ、それで今いらしていると……」
「そうなのよ、あの人うちの研究所の大スポンサーでね……忙しいところ態々あれの製作者に会いに来たらしいのよ」
「それは奇特な……」
「そうなのよ。あ、貴方の事は私の弟子って事になってるからよろしくね」
そういって私の反応を待たず祖母は応接室の扉を開いた。
中にいたのは背筋がピンと伸びた品の良いご老人だった。
ご老人は私を黙視するとソファーから立ち上がり、猛烈な勢いで私の手を取ります。
「あなたですね! お会いできて光栄です。私、サナエル商会会頭のサナエルと申します。いや~、お会いできて光栄です。貴方があの、陛下が手放しでおほめになられていた高名な魔宝技師、勝様ですね!」
ご老人サナエルの勢いに押される私です。助けを求めるべく私の横で我関せずを徹している祖母を見ます。
「私は秘密って言ったのよ。でもね、国王って名前の馬鹿が漏らしちゃったのよ。決して私がついつい自慢しちゃったわけじゃないのよ」
……秘密って言葉!
私はまだ手を放してくれないサナエルの言葉にうなずきながら、獣王国にある本体がポチタマに蹂躙されている悪寒に襲われます。
どうやらこの勝さん1号が私が無茶した事柄に関する隠れ蓑にするつもりらしいです。
……そんなに無茶しましたっけ?私。なぞです……。
(2章完)
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