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三百万円
「本来ならば私でなく君の側から出るべきシロモノだがね」
山田太郎は札束を再び押し戻した。彼女デリバリーは校則違反だ。口止め料の三百万が相場かどうかはわからない。しかし斡旋が成立するとなれ二人とも同じ穴の貉だ。どう転んでも太郎氏に利がある。さすが海千山千のIT社長だ。
「お断りします。我々は抑圧された逢瀬を適正化する有志であって汚れた出会いの場じゃない」
「ずいぶん大きく出たな。だがこのままでは学校側に通報する義務が生じる」
山田は手練れだ。硬軟使い分けてゆさぶる。きっと商談もこうなのだろう。
「ううっ」
吉田はそんな大金を持たない。
かのデリ部長として札束で殴り返すことができなかった。
仕方がないのでは、彼らの個人情報(住所、名前、顔写真、家族構成)を公開することにした。
その為には山田を警察に通報しなければならない。
「…君の腹の内を実行すると君も家裁送致だが?」
太郎は吉川を追い詰めた。都道府県条例に照らし彼デリは罰を受ける。もちろん関係者の人生も終わる。
「こんな怖い女は見つける価値がありません」
吉川は最後の切り札を使った。親が親なら子も子だろう。釣り合いの取れる鉄火肌を見つけることは困難だ。
それでも山川太郎は諦めなかった。
どうどうとカノデリ部に訴えた。「私は企業の経営者であり従業員の指導者であり社会の一員でもある。君の違反行為は保護者としても看過できない。通報させてもらうよ」
部長はバーン、と机に両手をついた。「貴方がここに来た事も」
本棚をカメラ目線で睨んだ。すかさず山田も内ポケットからUSBメモリースティックを取り出す。LEDがチカチカ光っている。
「もちろん、一本三百万円でどうだ」
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