心に響く鈴の音

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“りーん………りーん” 「うん………又あの音か……」 ………………… “りーん………りーん” 白狐は、最近耳にする涼やかな鈴の音に意識を集中する。 何時もは雑踏に掻き消されたり。 ま………俺が寝てたり。 気づいても、特に行動に出ることは無かった。 あの【神様辞めた発言】から3年が経っていた。 この社の屋根から殆ど動くこと無く寝ていたのだから。 そんな俺の耳にも、半年ほど前から気になる鈴の音が届いていた。 “祓いの鈴の音”でも“呼びかけの鈴の音”でも無い。 白狐は音を探して、早朝の人の疎らな境内を見回した。 (ここじゃ無い) 意識を集中させ、参道から一の鳥居までを心眼で見渡す。 一人の青年が、一の鳥居で参拝の義を行っている。 深くお辞儀をし、荷物を再び担ぐ処だった。 大きな籠に………あれは箒か? 気になってその青年を見つめ続けた。 青年は略式ながらも【参拝の義】を踏まえながらこちらに近づいてくる。 要所でのお辞儀。 寡黙に少し端を歩く参道。 手水舎(てみずや)での清めもそつなくこなす。 右手で柄杓で水を汲み、左手を清めると柄杓を持ちかえて、右手を清める。 再び柄杓を右手に持ちかえて、左の手のひらに水を受け口をすすぐ。 もう一度左手を水で清め、柄杓を立て残り水を柄の部分に伝わらせ清める。 「ほう………、今時珍しい」 白狐は益々その年齢にそぐわない“礼”を持つ青年が気になった。 頭にある風折烏帽子をくるりと後ろに回して社の屋根から一回転して飛び降りた。 白狐は青年と同い年位のキャップを被った青年の姿になった。
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