「やってられるか」

2/5
前へ
/89ページ
次へ
**** 古より続く神社仏閣が数多並ぶ京都。 霊験あらたかな社から、怪しげな社までがそこに在る。 人目をはばかる様に存在する寺。 【縁切り寺】を訪れる 者は、現在においても後を絶たない。 【縁結び寺】は、結婚願望ばかりが奉納される時代となっていた。 “人の縁”、その本来の意味すら知らぬ者ばかり。 を切る。 そんな願をたてたならば、次に必要なものがある。 を結ぶ事だ。 縁切りと縁結びは同時に願をたてなければ、縁の少ない人生を己が神に願ったのだと言うことになる。 そんな事にも気付きもせずに、縁切り寺だけを頻繁に訪れる者も居る。 そんな古来からの常識すら、今時の老若男女全てが知らない時代となった。 神社仏閣は既に、人の心の支えから違うものへと姿を変えていた。 【願いをを呟けば叶えて貰える】 そんな都合の良い場所となっている。 仕来り 礼節 何一つ理解せず、何一つ調べることも無い。 若者においては、ガムを噛みながら鳥居をくぐり、キャッキャキャッキャと大きな声で参道を歩く。 行楽地へ向かうかの様に、多くの笑顔が参道に溢れる。 社の前に着いたならば、頭を下げることも無く、手を合わせることも無く、競うように鈴を鳴らす。 そして己の好む回数手を叩き、適当に頭を下げて己の願望を口にする。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加