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「桂木のおばちゃん……、ただいま」
「えっ、翔子ちゃん……?
お帰り。あんまり小洒落た格好してるから、分からんかったよ おばちゃん」
そう言って、変わらない笑顔を見せてくれる。
優しい…………祖母と同じシワだらけの笑顔。
「へへっ………都会っ子になった?」
戯けてスカートの裾を摘まんで上げて見せた。
「ハハッ……りっはな都会っ子じゃよ
………2年ぶりか??な
翔子ちゃんは、秋さんの若い頃にますます似てきたのぉ。」
少し寂しそうな目で私を見るおばちゃんの言葉に頷いた。
「うん………、お祖母ちゃんが亡くなった時だから1年半………もうすぐ二年?かな」
自然と笑顔は消えて俯き加減に答えた。
「あ……そうだな秋さんが亡くなったのは、ここが見事な紅葉の頃だったなぁ」
「………うん……、お祖母ちゃんが1番好きだった景色に包まれて………お祖母ちゃんは……お祖父ちゃんの処へ行っちゃった」
祖母は家の庭で倒れていた。
桂木のおばちゃんに見つけられた時は未だ息は有ったときいている。
そして翌日、意識を取り戻すこと無く亡くなった。私が戻るのを待っていてはくれなかった。
二人の間に暫しの沈黙が訪れる。
言葉無く山を見つめ、見事な紅い山を思い出していた。
あの時の紅い山は新緑の時期を終え、見渡す木々は既にしっかりと濃い緑へと姿を変えている。
おばちゃんと二人で、強い陽射しを受ける緑々とした閑かな景色を眺めていた。
「こんな処に居ないで入りゃんさい」
おばちゃんは、手に持つバケツを持ち直した。バケツには沢山の新鮮な野菜が入っている。
「うん。
あっ、持つね………相変わらず立派なお野菜だね」
バケツから顔を出す、真っ赤に熟れたトマトが輝いて見えた。
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