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「父さん、翔子ちゃんがきんさったよ」
おばちゃんについて居間に向かうと、おじさんが眼鏡をずらして新聞から顔をあげた。
ここでも優しい笑顔が出迎えてくれる。
「おー、翔子ちゃん。
良く来たな。まっちょったぞ」
「うん……ただいま」
そして、おじさんの“待っていた”にお礼を告げる。
「おじさん……ごめんね。
面倒な事お願いして……
余り頻繁には戻って来れなかったから電話でお願いなんかしてしまって。
色々ありがとう……」
ペコリと頭を下げた。
軽く頭を振るとおじさんは優しい声で優しい言葉を届けてくれる。
「良いんじゃよ……気にせんでも良い良い。
翔子ちゃんは孫の様なもんじゃ。
“孫の頼み事”は、爺、婆には嬉しいもんなんじゃよ。
さっ、立っとらんでこっちに座らんか」
おじさんは、笑顔で手招きをしてくれる。
「うん」
私は、薦められるままおじさんの向かいに座った。
「おい、翔子ちゃんの好きな夏みかんがまだあったじゃろ。もってこんかい。
それにほら、今年の干し柿も冷凍しといたじゃろ……、翔子ちゃん干し柿好きじゃったよな。
それに………」
あれこれ並べようとするおじさんだけど、おばさんが呆れながら嗜める。
「お父さん……そんなに慌てなくても翔子ちゃんは逃げやせんわね。翔子ちゃんも疲れてるんだからゆっくりさせてやらんかね。
取り敢えずお茶でも入れようね」
おばさんの言葉に、思わずおじさんと目を合わせる。
肩を軽く上げ、首をすくめて笑うおじさんと笑いあった。
おじさんとおばさんが醸し出すこの居間の空気は、懐かしい祖父と祖母が居た頃の家を思い出させてくれる。
自分の瞼が、熱くなるのに気付いて誤魔化す様に立ち上がった。
「おばさん、私も手伝うね」
おばさんの居るキッチンへと向かいながら、こっそりと目尻をこすった。
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