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「“願い”が無い?ほんとに?」
彼の心を探るように、心の波動を観察しながら聞いてみた。
「“願いが無い”訳じゃ無い。
“神頼みする願い”は無いと言ったんだよ。
もういいだろ………、迷惑は掛けないよ。
一通り清めたら帰るから心配しないでくれ」
そう言うと、掃除を続け集めたゴミを担いで
社殿に一礼をして彼は帰っていた。
本当に何も願うこと無く。
(見返りを求めない?人間が……?)
遠い昔には当たり前に日常に存在していた“無償の奉仕”の姿、いや“無欲の奉仕”の姿を何年……いや、何十年ぶりに見ただろう。
俺の問いかけに、三神弓弦の心の波動は一切揺れることは無かった。
まるでそこに俺の存在はないかの如く……
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