第六帖 花はどうして美しいのか?

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 翌日の日曜日、一同はいつものように陽月の部屋に集まっている。  窓辺よりに大きめの焦げ茶色の台が置かれており、向かい合わせになるように紫色の座布団が六枚。窓を背にして真ん中に琥珀。彼の向かい側に陽月、彼女の右隣に萌音が。琥珀の右隣に喜響、そして琥珀の左隣にはノワールが座っている。いつもの光景だ。台の上にはそれぞれの前に、ピンクの薔薇をかたどったペーパーコースターの上にガラスコップが置かれている。その中は透き通った小麦色の液体で満たされていた。  窓から見える空は鼠色だ。しとしとと細やかな雨が降り注ぎ、木々や草花を潤す。 ……恵みの雨。まさに大地を潤す恵みの雨だわ。翠雨(すいう)ね。(みどり)でも(みどり)でもなくこの翡翠を連想させる字がまた素敵ね……  陽月は部活が始まるまでの間うっとりと窓の外を眺めていた。ほどなくして部長の声で我に返る。 「さて、昨日はお疲れさま。まさかたったの数時間で七不思議が解決するとは思わなかったな」  琥珀は満足そうに切り出した。 「本当にね」 「でも良かったわ」  萌音と陽月が続く。 「まぁ、まとめレポートは明日やるとして、だ。今日は我が部に届いている質問事項を検証しようと思う。その場で解決出来ればそれで良いし。何日かかかるようならリストアップして少しずつ片づけて行こう」  琥珀は指示を出した。一同は頷いた。
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