第三帖 フェリシティ学園高等部における七不思議 考察偏

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「……さて、ではまずこの七不思議を聞いて個人の見解をそれぞれ述べて行く事にしよう。じゃぁまず、いつも通り陽月から」  琥珀は今までと打って変わって真面目に切り出す。部員全員が非常に真面目な雰囲気となっている。  陽月は草花や風などの精霊や動物の会話など、通常では感じないものが視えたり感じたり出来る力を生かし、七不思議について感じる事をノートに書き記していた。それを元に読み上げる。 「では私が感じ取った事を。七不思議自体だけど、さほど怖い印象は受けなかったかな。ただ、皆が怖がるからその念が肥大して……という印象も受けなくはない。直接調べてみないと何とも言えないけど。では一つずつ。その①校舎入り口にある『フェリシティ学園乙女の像』は、引き離されてしまった恋人を探し求めて夜な夜な彷徨い歩く。それを見てしまった者は異世界に連れて行かれる。その②校舎玄関先に飾られている白ユリのステンドグラスが、黒く染まっているように見える時はその人に不吉な事が起こる。その⑤図書室に午後4時44分44秒に一人でいると、平安貴族の男子が現れ、古典和歌を詠ませられる。答えられないと異世界に連れて行かれる。詠むと辛口の批評をされる。 その⑥音楽室は午後6時を過ぎるとピアノの音が鳴り響く。曲名は『パッヘルベルのカノン』。ピアノを弾いているのが誰なのかは不明。それを見てしまったものは、あの世へと連れて行かれてしまう。 これらは事実と噂がごちゃ混ぜになった印象。 その③理科室の人体模型は、人間に戻りたくて目が合った人の心臓を抉り取ろうと狙っている。だから目を合わせてはいけない。うーん、これは事実とは違う気がする。かなり曲解されて面白可笑しく広まった印象。 その④西側4階の踊り場に、等身大の鏡がある。そこに午後4時44分44秒に自分の姿を写すと、自分についてる悪霊や邪霊、所謂よくないモノが見える。そして見えたものは、その代償に鏡の世界に引き込まれてしまう。その⑦最後の一つは謎。これを知ったものは呪われる。……これらはよくある噂に尾っぽとヒレがついて広まった、という印象を受けた。そんなところかな」  陽月は締めくくった。一同はしきりに頷いている。琥珀は書記の萌音がメモを取り終わるのを待ち、話を進める。 「なるほどなぁ。いつもながら、詳しくありがとな」 「いえいえ」  陽月は微笑んで見せる。
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