53人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ
「それじゃ次は萌音、宜しく」
と琥珀は水を向ける。
「じゃぁ私は、いつも通り噂の病み具合を強い順で上げて行くね」
と萌音は手元のノートを見る。彼女は幼い頃より、相手に触れるだけで少々の怪我や体の不調をたちどころに癒してしまう力を持っていた。
「その②、その①、その③、その④、その⑥、その⑦、その⑤……の順番で感じたかな。②と①と③以外は、さほど危険性というか緊急性は感じないわね。とは言っても、どれもそう恐ろしい次元のお話しではなさそう」
と締めくくった。
「毎度簡潔に分かり易くありがとな」
「いえいえ、あくまで感覚的な事だからね」
「それが毎回助かってるんだよ。さて、じゃぁ次は俺の見解を述べよう」
琥珀はコホン、と小さく咳払いをした。琥珀は人が心の奥深く封じ込めた無意識の領域の本心や、本音の建て前を使い分ける人の本音の部分を読み取る力を持っていた。
「いつものように、あちらの世界の事は全く分からないから、人間の念が深く絡んでいそうな感じがするものを上げていく。その②、その⑥、その④、その⑦、の順かな」
と述べた。
幼稚園の時からフェリシア学園に通う三人を強く結びつけたのは、それぞれが持つ不思議な力だった。陽月は草花や風などの精霊や動物の会話など、通常では感じないものが視えたり感じたり出来たし、琥珀は人の本音や無意識に封じ込め、本人も自覚の無い本心が読み取れる力を、萌音は相手に触れるだけで、少しくらいの怪我や病気をたちどころに癒してしまう力を持っていた。周囲からは奇異な目で見られる彼ら。そんな彼らは寄り添い合うようにして、友情という強い絆で結びついていったのだった。その力を上手く活かそうと小学校四年の際、『オカルト・ミステリー研究会』を立ち上げたのである。
最初のコメントを投稿しよう!