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そんなある日、ノワールは森の奥で独り震えている小動物を見つける。優しく咥えて陽月の元へと運ぶのだった……。
「ん? どうしたの? ノワール。珍しくボーッとして」
陽月が気遣わし気に声をかけた。ハッと我に返った様子の彼。
「いや、少し昔を思い出してな」
とほんの少し照れくさそうに笑みを浮かべた。
「あ!」
何かを思い出したように喜響は声を上げた。一同、どうしたのかと注目する。
「ね! そう言えば僕とノワールと陽月に出会ったのもこんな激しい雨が降って、パーッと晴れて虹が出たよね!」
と嬉しそうに声を弾ませた。
「そう言えばそうだったわね」
陽月はその時を懐かしむかのように遠くを見るような眼差しで彼を見つめた。
「へぇ? あれだ、確かノワールが小さなモルモットを咥えてきた、て陽月から聞いたぞ」
「そうそう。……あれ? でもそう言えば、まだ詳しく喜響とノワール、陽月の出会いについて聞いてなかったわね」
琥珀と萌音が興味を示す。
「あら? 話して無かったかしら?」
「うん、詳しくは話してなかったかも」
「……そうだな」
陽月の問いかけに、喜響、ノワールが応じる。彼らは互いに頷きあうと、琥珀と萌音に笑顔を向けた。
「あれはね、ちょうど初夏……今は異常気象でちょっと時期が早いけど、五月のゴールデンウイークに入る頃だったかな。私達三人が、小5の時よね」
陽月はゆっくりと、懐かしむように話し始めた。
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