第三帖 フェリシティ学園高等部における七不思議 考察偏

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 喜響はほんの少しだけ寂しそうな顔をした。当時を思い出したのだろう。 「ノワールになめて貰って、すぐ体の震えが止まったんだ。だから安心して連れて行かれた。そしたら陽月に会った」  と陽月に笑顔を向ける。二人は微笑みあった。 「慌てて固形の餌を買いに町へ降りたわ。小動物専門店が近くにあって良かったわよ。赤ちゃん用の固形の餌、ペレットを買って帰ったら、ノワールにお水を飲ませて貰ってたのよね。それで、すぐにペレットも食べて。とにかくよく食べる子だったわ」 「すぐに妖力も目覚めて。あっという間に人型にも変化(へんげ)出来るようになって。ついでに神渡神社にホームステイをしている海外留学生、という筋書きでここに居候。ついでに学園にも入学。オカルト・ミステリー研究会にも入部してあれよあれよという間の展開であったな」  ノワールは当時を懐かしむように天を仰ぎ、微かに笑みを浮かべた。エメラルドの 瞳が、深みを帯びて艶めく。 「……なるほど。俺たちが高等部に進級したら、もっと本格的にオカルト・ミステリー研究会の活動をしたい、ていう希望を汲んで、これまで静かに見守り、時に助言してくれたノワールも、ついに古典教師かつ顧問として加わるようになった、て訳か」  琥珀は心底納得が言った、という風に腕組みをし、大きくうん、うん、と何度も頷いた。それは萌音も同じで、ふぅん、そっかそっか、と何度も頷いている。  一同は互いを見つめあい、微笑みあった。和やかな空気が場を包み込んだ。
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