第四帖 フェリシティ学園高等部における七不思議 行動編

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「夕方四時……て言っても今日は土曜日だしさ、これから余裕で遊びに行けそうなほど明るいよなぁ」  琥珀はしみじみと、やや黄色みが強くなって西に傾いた太陽を見つめる。まだ空も淡いブルーだ。  一同は『フェリシティ学園高等部』に徒歩で向かっている。実際に七不思議を確かめに行く為である。  山を下りて少し歩くと、桜並木が続く土手沿いに川が流れている。その川沿いを真っ直ぐ歩いておよそ880m先に学園高等部にあるのだ。故に陽月は毎日徒歩で通学している。琥珀は自宅から2キロほど離れているので自転車通学。萌音は一番近くて、高等部からおよそ500mほど離れた場所に住んでるので勿論徒歩通学だ。  因みに幼稚園部、小学部、中等部、大学部、大学院部ともそれぞれ300mから500mほど離れた場所にある。空から見ると高等部を中心にそれぞれの学部が円を描いているような感じである。 「七不思議の午後4時44分44秒ってさ、秋冬の季節なら黄昏時じゃない? 春分の日を過ぎて日永(ひなが)になったら、明るくて幽霊とか妖怪も敬遠する、て言うかさぁ」  萌音は一同に問いかける。 「あ、それ思った。あちらの世界の人は、昼夜関係無くお出ましになる、て聞くけど、やっぱり明るい内に異世界がどうの、とか雰囲気出ないし。出て来ても張り合いないんじゃないかと思うのよねぇ」  陽月は同意を示した。 「あ、分かる!」 「だよなぁ」  萌音と琥珀がすぐに相槌を打った。 あれから、陽月と琥珀と萌音が手分けをしてツナとレタスのチャーハンと、ニンジンとキャベツのコンソメスープを作り皆で食した。片付けと皿洗いは喜響とノワールの担当である。陽月の家に集まった際のいつものお決まりのパターンである。  『オカルト・ミステリー研究会』は、お盆休みや年末年始、ゴールデンウイーク、秋休みなどを除いて、基本的に公休日は水曜と木曜、授業のある隔週土曜。月曜・火曜・金曜日とオカルト・ミステリーに関する噂や依頼の整理、推測、議論等を。授業の無い隔週土曜・日曜は実際に現場に出向いて調査を。そのようなスケジュールで進められている。現場に出向くとは言っても、まだ未成年だ。部費で賄える範囲内かつ危険が少ない場所、と限られてはいたが。 「まぁ、出て来ても張り合いが無い、か。実際、人間が怖がる姿を面白がるモノもいるからな。そういった可能性も無くは無いがな」  ノワールは静かに切り出した。
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