第四帖 フェリシティ学園高等部における七不思議 行動編

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「あとは、明るい内だと人間も活動的な事が多いから幽霊や妖の散財は気付かれにくい、という傾向もあるな。それに、あちら側の存在は影や闇の方が活動しやすい、というのもあるだろな」  とノワールは続けた。 「じゃあ、七不思議の中の4時44分44秒の案件の調査は難しいかしらね? 秋冬まで待たないと駄目かしら?」  陽月は不安そうに問いかける。 「あー、そういやそうだよなぁ」 「確かに」  琥珀と萌音も相槌を打つ。 「いや、そんな心配はいらないさ。七不思議が真実だと仮定して、その異世界に連れて行くというモノが仮に恥ずかしがりやで姿を現さなかったにしても、何らかの気配なり異変は感じ取れる筈だから」  ノワールは穏やかに答えた。だが内に秘めた静かな自信が、エメラルドの瞳に煌めきを与えている。彼がそう言うと、「大丈夫だ、きっと」と自然に思えるようになるから不思議だ。 「恥ずかしがりやと言えば、校舎入口の『フェリシティ学園乙女の像』って、結構お淑やかな美少女、て感じだけど。七不思議によればかなり恋に積極的だよなぁ。夜な夜な彷徨い歩いちゃうんだもん」  琥珀はややお道化たように切り出す。桜並木の木々から降り注ぐ木漏れ日が、琥珀のを照らし出し、明るい茶色の瞳が透明感のある琥珀色に見える。 ……きっと、生まれて目を開いた時、眩しい光を瞳にいっぱい吸い込んで琥珀色に見えたんだろうなぁ。ご両親には琥珀の宝石に見えたに違いないわ……  陽月は密かに思うのだった。 「お淑やかな美少女な、あの乙女の像、僕結構好みかもー!」  続いて喜響もお道化る。 「え? マジ? もしそうなら、協力するよ! ……て出来る事があれば、だけど」  どうやら琥珀は、半分は真面目に受け取った様子だ。言葉の後半は自信無さげであったが。彼は琥珀には特に感謝していた。そもそも、琥珀が人型に変化(へんげ)出来るようになってすぐに学園に留学生という形で入り、オカルト・ミステリー研究会に入部したのは、自身の修行の為でもあるが琥珀の為でもあったのである。 「ハハハッ。ジョークだよ、ジョーク」  喜響は可笑しそうに笑った。 琥珀はほんの少しだけ過去へと心の翼を広げた。
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