第四帖 フェリシティ学園高等部における七不思議 行動編

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『諸星琥珀ってさ、あいつ絶対タラシだよな』 『つーか恥ずかしくねぇのかよ、女だけとつるんで』 『いやいや、所詮気味悪い力を持つ同士でつるむしかできないんだろ』  小学校三年生もあと少しで終わりを迎える頃……。陰ではこのように言われている事を、琥珀は知っていた。元々人の本音が感じ取れる体質なのだ。陰口もダイレクトに感じ取れてしまう。陽月、萌音、自分のそれぞれの力を自然に生かせる場を作ろうと「オカルト・ミステリー研究会」を立ち上げようと担任を説得し、なんとか味方についてくれた。あとは教務と教頭と話し合って、という段階に来ていた。琥珀は別段、他の男子たちと話せない訳でもタラシな訳でも無い。要するに、それぞれにタイプの異なる美少女たちとつるんでいる事に嫉妬しているのだ。そんなに羨ましいなら、一緒に活動すれば良いのに、と思う。だが、変なプライドが邪魔してそれは出来ないらしい。  喜響はそんな琥珀の複雑な心境が手に取るように伝わっていた。ちょうど自分自身の修行のこともあるし、人間というものへの好奇心や、陽月達と学園生活とやらを楽しんでみたい。そこで、自らが学園の生徒になる事、琥珀達と行動を共にすれば男女の割合が半々で均衡が取れるではないか。そう考えたのだった。 ……喜響が入ってくれたことで、あらぬ噂は少しずつ少しずつ消えて行ったのだ。お陰で誰の目も気にする事なく、自由に部活に打ち込める。本当に感謝していた。もし、自分の力の及ぶ範囲内で何か出来ることがあれば、喜んで力を貸そう、そう思っていた。  そしてついには、高校へ目出度く進学のお祝いに、より安心により安全に、安定して部活が出来るよう、ノワールが先月古典教師、そしてオカルト・ミステリー研究会顧問として就任した。いくら妖で特別な妖力があると言っても、初めて経験する教師の仕事。周囲の心配をよそに、涼しげな顔で楽々とこなし、たちまち生徒、特に女子に大人気となった。そして現在に至る。 「……これだけ明るくても、校内には誰も居ないとなるとちょっと不気味ね」  琥珀は陽月の声で我に返った。どうやら学園に着いたようだ。調査の為、今日は各部活動をお休みにして貰った。構内にいるのは、宿直の守衛のみ。彼もまた、調査を終えるまでは自宅で待機するようになっていた。こういう時は特に、ノワールの講師としての立場が役に立つ。  一同はまず守衛の元を目指した。
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