第四帖 フェリシティ学園高等部における七不思議 行動編

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「とりあえず七不思議①から順番に回ろう。まずは一通り様子を見てみよう。どの道、午後4時44分44秒ネタは2つあるから、今日中に調べる事は不可能だしな」  まず、校舎入口の手前で琥珀がメンバーに指示を出す。一同、大きく頷いた。 「万が一の事を考えて、一列で行こう」  と琥珀は続けた。 「それじゃ、僕が先頭で行くよ」  と喜響が真っ先にかって出る。 「それなら私はしんがりだな」  とノワール。喜響を先頭に、2番目に琥珀、次に陽月、茂音、最後にノワール。この順番で一列に行く事となった。 「まずは七不思議その① 校舎入り口にある『フェリシティ学園乙女の像』は、引き離されてしまった恋人を探し求めて夜な夜な彷徨い歩く。それを見てしまった者は異世界に連れて行かれる。そこの乙女の像だ」  琥珀の声に、メンバーは一斉に乙女の像を見つめた。校舎入口の右側に、大きな銀杏の木がそびえ立つ。その後ろに隠れるようにしてそれは立っていた。身の丈は155cmほど。台座を入れたら165cmほどだろうか。  肩の下まで伸ばされたは髪は毛先が軽く波打ち、ハーフアップにして大きなリボンで結ばれている。細面で鼻が高く、目元涼やかな和風美少女だ。ブーツに羽織袴姿の、ほっそりとした少女のブロンズ像だ。少女は天を仰ぎ、左手を軽く胸に、右手は何かを掴むように虚空に伸ばしている。左足を軽く前に踏み出した形で建てられている。タイトルは『未来へ……』である。希望に満ちた未来を夢見て一歩踏み出す姿を象徴しているそうだ。  メンバーは静かに像の周りを取り囲むようにして集まった。琥珀と萌音は、陽月に目を向け、頷く。陽月は「分かった」というように頷き返し、半歩前に出た。ちょうど像の真ん前の位置だ。そしてしっかりと像の目を見つめると軽く目を閉じ、両手の平を合わせて拝むような仕草をする。やがて静かに語り掛けるようにして言葉を紡いだ。 「失礼します。少し拝見させて頂きますね。学園内に広まっている、あなたの不名誉な噂を払拭する為の調査です。どうかお許し下さい」  深々と頭を下げる陽月。その様子を静かに見守る一同。とても神聖な空気があたりを包み込んだ。
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