第四帖 フェリシティ学園高等部における七不思議 行動編

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 目を閉じた萌音の脳裏には、ステンドグラスは純白に輝いているように感じた。そして周りを渦巻くのは、人々の負の感情。それはどす黒い煙のように黙々と取り囲んで見えた。そっと目を開ける。ステンドグラスを見上げながら話を始めた。 「私にも、ステンドグラス自体は何の問題もない、むしろクリアに感じた。人の負の感情がこのあたりに溜まりやすいのね、きっと。メンタルの状態が良くないと、白いユリも黒く染まって見える。そんな感じ。琥珀と同じ見解よ」  と笑みを浮かべた。 「やっぱりそうか」  と琥珀は萌音に微笑みかける。二人は微笑みあった。琥珀の明るい茶色の目が嬉しそうに煌めく。萌音の大きな漆黒の瞳は、研磨された黒曜石のように神秘的だ。 ……お似合いの二人……  と陽月は思う。これでもう何度感じた事だろう。 ……萌音って、本当に一昔前の少女漫画に出てきそうな美少女よね……  そして決まって感じる、萌音への憧れ。そして僅かな嫉妬。その時、そっと陽月の左肩に触れる手の感触を覚える。 「どうした?」  小声で気遣うノワールだった。大丈夫、というように首を横に振る。それはほんの一分ほどの時間の中のことだった。 「陽月はどう感じた?」  琥珀が意見を求める。陽月の鼓動がトクン、と跳ねた。 ……馬鹿な私。部員の一人として水を向けられただけなのに、何浮かれてんだか……  内心では自嘲しつつ、 「私も二人と同じ見解よ。気分が憂鬱な時、気分的に黒く見えるんじゃないかな。黒いユリって確か、花言葉が『呪い』とか『復讐』だったりするし。ついてないことがあったりすると、クロユリのステンドグラスを見たから、と結びつけやすい。これには心理的なことが絡んでると思うわ」  とハッキリと述べた。 「三人とも同じ見解だな。どうだろう? ノワール、喜響」  琥珀は話をまとめ、妖二体に意見を求めた。
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