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「外はまだまだ昼間みたいに明るいわねぇ」
階段をぞろぞろと一列で上る。陽月は踊り場に設けられた窓の外を見ながら言葉を発した。窓から優しく午後の陽射しが舞い込む。そこから覗く景色はスカイブルーに浮かぶ白い薄雲だ。
「まぁな。時間が経つの忘れちまうよな」
琥珀が応じた。
「真夏になれば夜7時くらいまで明るかったりするもんねぇ」
と萌音。
「そうそう。だけど確実にあちらの世界の住民が活発になる時間帯は変わらずにやってくるから。浮かれ過ぎは禁物だよ、と」
喜響はやんわりと注意を促しつつ階段を進む。
「あー、やっぱりそうなんだ?」
「なるほどねぇ。特に祭りの時なんか気をつけないと、だわねぇ」
「神社とかもよね。やっぱり夕方がいくら明るくても、あちらの世界の住民が活発になりやすいって事だもの」
琥珀、萌音、陽月の順で琥珀の話に納得し合う。
「さてと、着いたよ。七不思議その④、西側4階の踊り場の等身大の鏡。午後4時44分44秒に自分の姿を写すと、自分についてる悪霊や邪霊、所謂よくないモノが見える。そして見えたものは、その代償に鏡の世界に引き込まれてしまう」
といいながら、喜響は踊り場に備えられた鏡の前で止まる。そして一同を振り返った。
皆ぞろぞろと鏡の前に集まる。見たところ、どこにでもある等身大の鏡だ。
「備え付けられた鏡は、2階から5階まで各踊り場ごとに備えつけられている。東口の階段もそれに同じだ。……さて、時刻は午後4時38分過ぎたところだ」
琥珀は状況を整理し、纏めた。
「大勢で見ていたら、それこそ恥ずかしがって出て来なそうだよな。鏡に映して、自分に憑いてる悪霊や邪霊、所謂よくないモノがついてそうな奴……て、俺しか居ないじゃん!」
とお道化る。クスクスと一同は笑い合う。
「さて。じゃぁそういう事で、ここは俺が一人でやってみるわ」
と鏡の真ん中に向かって一歩踏み出した。
「どうかな。少なくともここにいるメンバーの中には良くないモノは憑いていないと思うが……」
ノワールは冷静に切り出す。
「まぁ、取りあえずやってみるよ。何かしら起こるかもしれないし。皆、鏡から離れて見てて」
と琥珀は軽く右手を上げ、一同に手を振った。
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