54人が本棚に入れています
本棚に追加
(……あれ? 俺ってこんな顔してたっけ? なんかもっと……あれ? 俺ってなんだっけ?)
琥珀はじっと鏡の中の自分を凝視して7分が経過しようとしていた。軽く混乱している様子だ。
……なんだか鏡に映る世界って、どこか現実と違うというか。全て反対に映る世界だから、てだけじゃなくて、ほら、左右の絵や写真を見比べて違う箇所を探すゲームみたいな感じ。すごくそっくりなんだけど、どこか違う、みたいな……
陽月は頭がクラクラし出した。
(……鏡に映るの、琥珀が琥珀であって琥珀じゃないような……あれ? 何言ってるの?私……)
萌音も頭がふらついてきた。その時、
「はいはい! そこまで!」
と言いながら喜響は琥珀と鏡の間に瞬間移動し、鏡を遮るように琥珀の前に立った。
「あれ? 俺……」
琥珀はいきなり頭の中がクリアになった様子で、今までの自分に首を傾げる。喜響と同時にノワールは、傍らの陽月と萌音の間のやや後ろに立つ。そして右手で陽月の右肩を、左手で萌音の左肩を抱え込むようにして回すと
「こら、二人ともしっかりしろ!」
と声をかけた。
「あ……」
陽月はすぐに正気に戻った。
「あっ!」
萌音もである。だが左肩に触れるノワールの手を見て、頬がかすかに桃色に染まった。
「皆、少し催眠状態になっていたんだよ。まぁ、一種の自己暗示というかね」
喜響は明るく朗らかに切り出した。
「え? どういう事?」
琥珀はすぐに問い返した。ノワールに軽く促され、陽月と萌音は琥珀の傍へと集まる。ノワールもゆっくりと後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!