第四帖 フェリシティ学園高等部における七不思議 行動編

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「残忍な手口で大量に人を殺めた某独裁者が使った洗脳の手口に、鏡を凝視して自分に語りかけさせる、というものがあった。自分の事を好きになれない人が、毎朝毎晩自分に向かって自分を褒めるよ良い、という自己暗示が一昔前に流行ったらしいが、あれにはこのような危険性があるのだ。最悪の場合、精神が壊れてしまう事も有り得る」  ノワールは更に冷静に纏めた。 「うわ、怖いなぁ」 「それ怖いね。知らないで実行したら……」 「危険じゃない……」  琥珀、萌音、陽月と三人で身を寄せ合い、身震いする。 「そ。だからね、この七不思議はそういう危険性の警告も含んでるんだよ。昔々の人々が、夜に爪を切ると親の死に目に会えない、とかあんな感じで、昔は灯りが十分に無かったから、暗くなって爪を切るとよく見えない上に怪我をしやすいし、切った爪もどこに飛んで行くか分からなくて危険な上に衛生上も良くない。そんな戒めを込めた言の葉。この七不思議のその④は、そういった鏡を凝視し過ぎる事への警告を含んでるんだと思うよ。それが、色々な経緯や噂で人から人へと流れて、七不思議の一つに組み込まれていった。そんな感じだろうね」  喜響は明るく締め括った。 「なるほど。確かに異世界に引きずり込まれそうな錯覚を覚えたもんなぁ」 「そうねぇ」 「でも、納得したわ」  と、琥珀たちは盛んに頷き合った。 「よし! じゃぁ七不思議その④は解決だな。じゃぁ、その③理科室の人体模型は、人間に戻りたくて目が合った人の心臓を抉り取ろうと狙っている。だから目を合わせてはいけない。この真相を確かめに3階に戻ろう!」  琥珀は切り変えるようにしてパチンと一度手叩きをすると、そう言って一同を促す。再び喜響を先頭に、一同は階段を下りていった。
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