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シーンと静まり返った廊下を、ゾロゾロと歩いて行く。誰も居ない教室はまだ外が明るいにも関わらずどこか寂しい。そしてどこか不気味だ。誰もが無言で歩いて行く。
「怖いね」
と口に出せば、たちまちに恐怖が全身を支配してしまいそうだ。
……ノワールや喜響がついていてこれだけ怖く感じるんだもの。一人でいたらまずパニック状態になりそうだわ。まして暗くなってからなんか、尚更恐怖で押しつぶされそう……
陽月は感じていた。誰も一言も発しないで歩いていると、ひたひたと足音が妙に響く。
……なんだか、足音が一人増えていそうな、そんな気分にすらなるわね……
なんとなく琥珀の背中に頬を押し付けてみたくなる。
……何馬鹿な事思ってるのよ……
思わず頬が熱くなった。そのせいか、いくらか恐怖が和らぐ。
(なんだか先頭の喜響も、後ろのノワールも、もしかしたら幽霊といつの間にか入れ替わってたりしたら……)
萌音も恐怖の妄想が頭の中を渦巻いていた。
「さ、着いたよ」
喜響は理科室の前で立ち止まった。
「みんな、軽く恐怖に支配されてたでしょ」
と何でもない事のように言った。
「うん、なんかさ。途中からやたら怖くなったから、食べたいものとか思い浮かべて気を紛らわしていたよ」
琥珀はすぐに答えた。
「喜響とノワールがついているのに、なんだかやたらと怖くなったわ」
と陽月が続ける。
「私なんか、喜響とノワールがいつの間にか幽霊に入れ替わってたら、なんて妄想が浮かんだりしたわ」
と萌音。
「だって、途中から『妖怪オソロシヤ』が遊びに来てたもん。怖くなって当たり前だよ」
と喜響は朗らかな笑顔を見せる。
「「「『妖怪オソロシヤ』???」」」
琥珀、萌音、陽月が声を揃えて問いかけた。
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