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 やはり、どうしても行かなくては。  意を決して泳ぎ出すと、身体は軽快に動いた。  息苦しいほど胸が騒ぐ。目指すべき方角を、この体は覚えている。  本当はずっと気になっていたのだ。何かに呼ばれている気がした。だが、それに従うのは、まるで彼女が生きてきた時間を否定するようで恐ろしく、知らないふりをしていた。  まさか、あの浜に戻る日が来ようとは。不自由さを嫌って飛び出した、あの小さな、息苦しい世界へ。
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