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 泳ぎ出た世界は深く青く、どこまでも広がっていた。  完璧に自由だった。どこまでも泳げた。そこには、彼女を行く手を阻むものは何ひとつなかった。  優しい水に抱かれる安心感に、叫び出したい気分だった。夜が明けると、青い水は光に澄んできらきらと輝いた。美しかった。世界に再び闇が訪れても、もう何も恐くなかった。  そうして勝ち取った自由と孤独を、彼女は長年愛していた。  けれど、時を過ごすうちに変化は訪れた。いつの間にか、寂しさが募っていた。
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