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彼女は大きく首を捻ると、自分の身体を眺めた。引き締まった堅牢な甲羅は鮫の歯も防ぐ。体だってとても大きくなった。この辺りに彼女を補食することができるものはもういない。
成熟したのだ。その日がやって来たのだ、と、彼女は思った。
さようなら、と彼女は愛しいものたちに別れを告げた。柔らかな砂のベッド。優しく揺れる海藻の林。どこまでも見渡せる高台の岩。
冷たい海流に乗ると、それらは飛ぶように消えていった。溢れた涙は彼女を抱く水に消えていく。
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