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春の匂いがするようになってから、そろそろ2週間ほど経つ。
丸かった雀が少し細くなって、桜を連れてやってきた。
「いってきます!」
お気に入りのワンピースを着て
ぼさぼさな髪の毛を綺麗にまとめて
今日は暖かいから、赤いサンダルを履いていこう。
玄関を開けると、桜の花びらが足元に落ちていた。
きっとあそこも、満開に違いない。
小走りで向かったそこは、踏切に繋がる100メートル程の並木道。
ここの桜はすごく綺麗なのに、あまり人が来ない隠れスポット的な所だ。
今日もここを通り抜ける人なんか一人もいない。
そんなんだから、ここの桜が私だけのために咲いてるんじゃないか、なんて錯覚を起こしてしまいそうになる。
並木道の入口に立つ。
ぶわっ、と風が大きく吹いて、桜の花びらが舞う。
それを合図に、私は一歩踏み出した。
昔習っていたバレエのステップを刻みながら、並木道を踊り抜ける。
タッタッラタ、ラッタッタ
足を運ぶ。
タッタッラタ、ラッタッタ
靴の音を鳴らす。
リズムを口ずさみながら、踏切の入口まで、桜の中を踊った。
不意に、左足がフッと軽くなった。
私が履いていたサンダルが、足から脱げてしまったのだ。
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