うらめしやなんて言わないよ

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原因は薄々、というかガッツリ気づいていた。もう、美穂子しかいないだろ。 アイツは俺を恨んでいる。そして、呪い殺そうとしているんだ。 恐怖に怯えた俺は、眠ることもできなくなり、かといって出ていく力も残っていなかった。 「デェ~エーアッ!エェ~エ。アァア~!」 今夜もまた始まった。耳を塞いで目を瞑り、時間が過ぎるのを待った。 幸いにも、歌が聞こえるだけで、他に被害はない。この数分の恐怖に耐えれば良いのだ。 「デェ~エーアッ!エェ~エ。アァア~!」 でも、何故だか今日は、いつまで経っても歌がやまない。 「デェ~エーアッ!エェ~エ。アァア~!」 「ひぃっ!」 怖くて朝までつけている電気が全て消えた。 「デェ~エーアッ!エェ~エ。アァア~!」 そして、ガチャガチャと鍵を開ける音がする。 「デェ~エーアッ!エェ~エ。アァア~!」 ただただ震えながら、手探りで携帯を探した。誰でも良い。警察でもなんでもいいから! すると一瞬だけついた灯りで、ボザボサの髪の女が目の前に佇んでいるのに気づいてしまった。 「デェ~エーアッ!エェ~エ。アァア~!」 歌っているのはこの女だ。ドアの鍵の音も、いつまでたっても鳴りやまない。 「美穂子!!美穂子なんだろ!?悪かったって!!」 「デェ~エーアッ!エェ~エ。アァア~!」 「ごめんなさい!!ごめごめごめ許して下さい!!許して許して許して許してくださぁぁぁぁぁぁぁあ 」 「デェ~エーアッ!エェ~エ。アァア~!」 もう一度灯りがついた。長い前髪の隙間から見えるギョロギョロとした目がこちらを睨んでいる。 美穂子がヨボヨボの手で俺の腕を掴んだ。 人間みたいに温かく、余計に気味が悪い。 「ゆる……許して」 ダメだもう死ぬ。そう思った時、ガチャガチャとずっと響いていた音がピタリと止まり、ドアが勢いよく開いた。
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