うらめしやなんて言わないよ

8/9

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「やめて!!」 「み……ほこ?」 ドアを開け、部屋に入ってきたのは、他でもない美穂子だ。 しかも、死んでいるとは思えない、あの頃と変わらない優しい雰囲気を纏った、俺の愛する彼女だ。 美穂子は必死な表情でこちらに近づくと、思い切り奇妙な女を突き飛ばした。 すると、瞬く間に消えていく女。 「どういうこと……」 美穂子はホッとしたように俺に笑いかけた。 「てっちゃん、変な霊に目をつけられて、呪われてたんだよ。でも大丈夫。私がやっつけたから」 そんな……美穂子が俺を恨んで呪ってたんじゃないのか……? 「私……もう死んじゃったから、一緒にはいられないけど。ずっとてっちゃんのこと、見守ってるから。だから、元気だして」 途中から目を潤ませて笑う美穂子を見て、俺もボロボロ涙を流した。 「怒ってないの?」 「怒ってないよ。仕方ない人だなぁって、呆れたけど」 「ごめん美穂子。ごめんなぁ!俺、俺、」 「もういいよ。……じゃ、私行くね」 もう、美穂子しかいない。 こんなどうしようもない俺を、受け入れてくれるのは。許してくれるのは。 「待ってくれ!!」 俺は美穂子の腕を強く握った。あの頃と変わらない温度と感触に、もっと涙が出た。 「俺も!俺も連れていってくれ!」 「え……?何言ってるの。死んじゃうんだよ?」 「それでも!それでもいいから!」 「でも……」 「俺、もうお前なしじゃ生きていけないから!美穂子が居ないなら、もう生きてても意味ない!一緒にいたい。天国でも、一緒に……」 「てっちゃん……」 俺達は二人して泣きながら抱き締め合った。 こんなに幸せを感じたことは初めてだ。 そして、こんなに彼女が綺麗だと思ったのも。 「じゃあ、いこっか」 「ああ」 俺は、彼女に連れられて、やっと安心して眠ることが出来たのだった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加