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「やめて!!」
「み……ほこ?」
ドアを開け、部屋に入ってきたのは、他でもない美穂子だ。
しかも、死んでいるとは思えない、あの頃と変わらない優しい雰囲気を纏った、俺の愛する彼女だ。
美穂子は必死な表情でこちらに近づくと、思い切り奇妙な女を突き飛ばした。
すると、瞬く間に消えていく女。
「どういうこと……」
美穂子はホッとしたように俺に笑いかけた。
「てっちゃん、変な霊に目をつけられて、呪われてたんだよ。でも大丈夫。私がやっつけたから」
そんな……美穂子が俺を恨んで呪ってたんじゃないのか……?
「私……もう死んじゃったから、一緒にはいられないけど。ずっとてっちゃんのこと、見守ってるから。だから、元気だして」
途中から目を潤ませて笑う美穂子を見て、俺もボロボロ涙を流した。
「怒ってないの?」
「怒ってないよ。仕方ない人だなぁって、呆れたけど」
「ごめん美穂子。ごめんなぁ!俺、俺、」
「もういいよ。……じゃ、私行くね」
もう、美穂子しかいない。
こんなどうしようもない俺を、受け入れてくれるのは。許してくれるのは。
「待ってくれ!!」
俺は美穂子の腕を強く握った。あの頃と変わらない温度と感触に、もっと涙が出た。
「俺も!俺も連れていってくれ!」
「え……?何言ってるの。死んじゃうんだよ?」
「それでも!それでもいいから!」
「でも……」
「俺、もうお前なしじゃ生きていけないから!美穂子が居ないなら、もう生きてても意味ない!一緒にいたい。天国でも、一緒に……」
「てっちゃん……」
俺達は二人して泣きながら抱き締め合った。
こんなに幸せを感じたことは初めてだ。
そして、こんなに彼女が綺麗だと思ったのも。
「じゃあ、いこっか」
「ああ」
俺は、彼女に連れられて、やっと安心して眠ることが出来たのだった。
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