殺戮おかあさん ~そういうことじゃなくて~

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「うちのタカシちゃんを殺したのはあんた達ね!?」 そう言って、母さんは僕の同級生の一人を包丁で突き刺した。 彼は見たこともないくらい盛大に血を口から噴き出して、「カッカッ」と動物みたいに鳴きながら膝から崩れ落ちる。 返り血を浴びた母さんは、目がもうあっちの方向を向いてしまっていて、正にそう、いつもの母さんじゃない、状態だ。 僕は上から、「違うよ。殺されてないよ。自殺だよ」と何度もツッコミを入れるけど、母さんは聞く耳を持たない。 死人に口なしっていうし、母さんからは僕は見えていないみたいだから仕方ないけど、もしも見えていたとて、聞こえていたとて、いつものように思いをキャッチしてくれないから、同じことか、と思った。 もう既に亡骸となった同級生の腹を、更に何度もズブッスブッと突き刺している包丁は、よくみると見覚えのある桜の模様が入っていた。 おいおい、それ、今まで料理に使ってた奴じゃん。 やめてくれよ。それで鶏肉とか切ってたじゃん。 僕は吐き気を催す。死んでても気持ち悪さって感じるんだなって思いながら、縄の跡がくっきりついた喉元に触れた。
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