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死体がゴロゴロ転がっている山林に佇む母さんは、もうなんか、殺りきった感がすごくて、ダークヒーローさながらに天を仰いだ。
僕に報告でもしてるつもりなんだろうか。全く反吐が出るよ。
「タカシちゃん、母さん頑張ったよ。……今そっちに行くから」
来ないで!お願いだから来ないで!
もう関わりたくないんだよ貴方に。
本当に、ちゃんと遺書読んだの?
「……終わった?」
母さんの背後で、くしゃっと枯れ葉を踏む音が鳴る。
現れたのは同級生のオバタ君だった。
母さんは、血みどろのくせにうっとりした表情で、「ええ」とだけ答えた。
オバタ君は、煙草を吸いながら「スッゲーな」と笑う。
そう、オバタ君こそが、僕を虐めて、虐め抜いた張本人だ。
そして、母さんはオバタ君に恋をしていた。
それが僕の死んだ理由だ。
「ねえ、本当に殺してくれるの?痛くしないでね」
彼は、少女の様にしおらしくなった母さんの、パッサパサの頭を撫でた。
「ああ。これでタカシ君も報われるよ。よく頑張ったね」
「死ぬ前に、……最後に抱いてくれる?」
この異常なシチュエーションに興奮しているのか、二人は死体達が見守る中、湿った枯れ葉の上で激しく愛し合った。
それはそれは気持ち悪い光景で、お化けになった同級生達にも同情される始末だ。
でもこれで、みんなに復讐される心配もなくなったから、ナイスな試みだね。
でも一つ、最後の気がかり。
母さんに死んでほしくない。
もう、うんざりなんだ。
二人が果てた後で、オバタ君は母さんに何やら薬を差し出した。
こんなもので自分だけ楽に死のうとする母さんが憎たらしかったし、自分の手は一切汚さずに人の死を楽しむオバタ君を心底軽蔑した。
そして、お化けらしく、彼らを呪い始めることにしたんだ。
同級生達が一斉に「頑張れ」「負けるな」と応援してくれる。
第二の青春の幕開けだ。
僕は全身全霊で二人を呪い、オバタ君を殺すことに成功した。
息が途切れる最後の最後までのたうち回るオバタ君と、大笑いしながら自分の手足をノコギリで切り始める母さん。最後の右腕は、僕が手伝ってあげたよ。サービスで目も潰しておいた。
「母さん、ずっと死なないで」
そう願いながら。
さあ、訳もわからずこちらサイドに来たオバタ君のアホ面と言ったら。
僕達は、「いらっしゃい」と笑って、彼を迎え入れた。
うふふふ、おしまいです。
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